MLSとは?

 これまで長らくサッカー不毛の地などと言われてきたアメリカですが、旧リーグの解散(1985年)の経験を経て、1996年にMLS(メジャーリーグ・サッカ-)が設立されてから、徐々に人気が高まってきています。欧州の有名選手が今でもコンスタントに加入していることや、日本人選手も徐々にですが加入するようになってきており、日本でもMLSはよく知らないけど認知はされるようになってきている、と感じます。
 そんなMLS、一体どういうリーグなの? そしてどういう雰囲気なの? リーグの歴史や仕組みは他のページにお任せするとして、ここでは実際に足を運んで観戦した経験、印象などをもとに、単なる観戦者という視点でMLSを紹介してみたいと思います。
 

MLS参加クラブ

2020年現在で26クラブ!

 MLSは2020年現在、26クラブが参加。MLSのリーグ構成は、トップリーグのみを前提とした東西のカンファレンス制となっていて、野球MLBなどと同様、アメリカ独特のシステムで運営されています。日本や欧州のように1部・2部制を採用していないのは、クラブへの投資リスクを回避するため、といわれています。

まだまだ拡大中のMLS!

 Jリーグをみると、創設時が10クラブだったものが今ではJ1からJ3まで50クラブを超えるところまで拡大、発展してきました。
 Jと同様、歴史がそれほど深くないMLSもただいま拡大、発展中で、1996年の創設時は10クラブでスタートし、今では26クラブ。特に2005年以降は毎年1クラブのペースで新クラブが加入しています。

MLSのスタジアム事情

クラブ加入とともに新スタジアムも建設ラッシュ!

 ところで、MLSの拡大がJリーグと違うのは、MLSは新設のサッカー専用スタジアムを携えて加入してくること! さすがに加入初年度は既存のアメフトスタジアム(それでもフットボール専用!)を借用しますが、2年目、3年目には2万~3万人規模の立派な新スタジアムをオープンさせています。
 最近の新加入クラブと新スタジアム開場年は、以下のとおりとなっています。これまでは大都市を中心に加盟してきたMLSクラブは、中規模の都市にまで拡大しようとしています。こういった中規模都市でのMLS観戦のために渡米するもの新鮮味があっていいかもしれませんね。

クラブ名クラブ加入年新スタジアム開場年・スタジアム形態
オーランド2015年加入2017年 サッカー専用 2.5万人級
ミネソタ2017年加入2019年 サッカー専用 2万人級
アトランタ2017年加入2017年 NFLとの共用 7万人級
ロサンゼルスFC2018年加入2018年 サッカー専用 2万人級
シンシナティ2019年加入2021年予定 サッカー専用 2.5万人級
マイアミ2020年加入2022年予定 サッカー専用 2.5万人級
ナッシュビル2020年加入2022年予定 サッカー専用 3万人級
オースティン2021年加入2021年予定 サッカー専用 2万人級
シャーロット2021年加入サッカー専用としては具体的予定なし
サクラメント2022年加入2022年予定
セントルイス2022年予定2022年予定

すべて球技専用スタジアム!

 Jリーグでは徐々にフットボール専用スタジアムが増えてきたとはいえ、ピッチと観客席が遠い陸上競技場をホームスタジアムとしているクラブが多いのが現状。
 ところがMLSは、なんと陸上競技場をホームとしているクラブはゼロ! NFLとの共用で、現時点で具体的なサッカー専用スタジアム建設構想がないクラブは、シアトル、アトランタ、ニューイングランドの3チームのみ。サッカーの観戦環境は、かなり整っていると言えるのではないでしょうか? なお、アトランタはNFLとの共用を前提に新しく巨大なスタジアムを建てました。
 

アクセスは事前に勉強を!

 スタジアム環境は文句なしのMLSですが、郊外型、都市近郊型のスタジアムを観戦するには注意が必要です。特に郊外型はレンタカーでしかアクセスできないスタジアム(コロンバス、カンザスシティ、コロラド等)が存在するので、下調べは入念に!
 また、郊外型、都市近郊型はシャトルバスを運行しているスタジアムもありますが、バス発着駅周辺の治安が心配な地域(フィラデルフィア等)だったり、乗り場が不明確だったりしますので、ナイトゲームであれば思い切ってレンタカーにしたほうがいいかもしれません。
 ただし近年は、駅前スタジアムや街中スタジアムが増え、都心回帰型になりつつあります。コロンバスの現サッカー専用スタジアムが完全な郊外型ですが、都心部に新たにスタジアムを整備する構想を打ち出しました。
 

観戦者・サポーター

人気に差が出てきたMLSクラブ

 リーグ全体では盛り上がりを見せているMLSですが、テレビやYouTubeをみていると、スタジアムが常に満員となるクラブ、あまり客入りがよくないクラブが見受けられます。
 常に満員となるクラブは、チケット確保に苦労しますが、スタジアムの雰囲気は最高! 逆に客入りがよくないクラブは盛り上がりに欠けますが、チケットは容易に入手できて価格が比較的安めなのと、ほのぼのとした雰囲気で観戦できるのが利点です。
 個人的に、客入りがかなりよくて盛り上がっていそうなクラブはここ!  雰囲気重視で観戦するにはおすすめです。

  • シアトル(観戦歴なし)・・・MLSの盛り上がりについて語られる際によく引き合いに出されるクラブ。NFLスタジアムと共用ながら常に満員で、観客動員数は常に上位に入ってきます。
  • ポートランド(観戦歴なし)・・・2万人規模のスタジアム。YouTubeで見る限り、得点時の盛り上がり方の爆発力がすごい! 
  • ロサンゼルスFC(観戦歴なし)・・・創設は2014年、MLS加入は2018年と新しいクラブですが、大物外国人の積極的獲得などにより、加入後間もないにも関わらずLAギャラクシーと引けを取らない強豪・人気クラブとなりました。2020には、加入3年目にしてCONCACAFチャンピオンズリーグ参戦を果たしています。立ち見応援の人数がすごく多く、横揺れチャントは圧巻!
  • ミネソタ・・・新スタ効果なのか、客入りは満席に近いぐらい入っています。雰囲気はJリーグにとても似ていて、奏でるチャントに迫力があります。
  • カンザスシティ・・・ここの客入りは意外でした。2万人規模のコンパクトなスタジアムのスタンドは1層式で全周に屋根があり、仙台のように歓声がよく響きます。カンザスシティの人たちは自分の街が大好きなのでしょうか、普段からロイヤルズ(MLB)やスポルティング(MLS)のロゴが入ったシャツを着て歩く人が多い印象です。
     

MLSサポーターのみなさん ~安心・安全なスタジアム!~

 MLSでは、Jリーグのようにサポーターがゴール裏等に固まって陣取り、チャントを歌うという観戦文化があまりありません。サポーター集団はいるのですが、かなり小規模です。その中でもミネソタは、Jリーグのようにゴール裏に陣取り大勢でチャントを歌って威圧感を出しているのでJリーグの応援にかなり似ています。
 アウェイサポーターの観戦事情については、Jリーグでは緩衝帯を設けてきっちり区画され、スタジアムによってはコンコースも一切往来禁止となっていますが、MLSではそういった管理はほとんどなされていません(私が知る限り、そういうクラブはないかも)。アウェイ戦でのLAギャラクシーのサポーターは比較的1箇所に固まって応援する集団がいるようですが、ほとんどの場合、アウェイユニフォームを着たままホームの人たちと混じって観戦しています。敵味方同士のサポーターによるトラブルはとんど発生しないのでしょう。
 

MLSのサッカー

MLSは攻撃大好き!

 MLSには降格制度がないため、勝ち点1を得るため守備を固めるなどという概念がなく、ほとんど攻めています。試合開始直後なのに「終盤でよくみる中盤省略型」のカウンターのような攻めになることもしばしば。90分以降、相手陣地のコーナーの隅でボールをキープして時間を稼ぐこともほとんど見受けられません。
 とにかく常にどんなときでも前を向くサッカーです。そして、選手は本当に90分間、攻撃のためによく走ります。
 

とにかくよく点が入る!

 サッカーは点が入らないからおもしろくない・・・これはサッカーを観ない方たちからよく聞こえてきます。
 しかし! MLSは前述のとおり攻撃大好きサッカーなので、とにかく点がよく入ります。統計は別に取っていないのですが(※)、印象として0-0で終わる試合はほとんどありません。そして、いわゆる馬鹿試合と言われるスコアがかなり多く、一方のチームが4点、5点、6点などという試合も決して珍しくありません。MLSはゴールパフォーマンスが多彩、盛大なので、盛り上がるチャンスが多いですよ! 

(※)MLSの公式パンフレットにおいて、MLSが最も得点が入るリーグであると紹介されました。詳しくはこちらの記事へ!
 

ファールがなくクリーンなイメージ

 MLSのもうひとつの特徴は、これも個人的印象ですが、ファールが少ないように思います。少なければ試合が途切れることがないので、ストレスなく観ることができます(VARはありますが)。
 そして、これはアメリカの文化なのでしょうか、審判を欺くようなファールを貰いに行く行為があまりない気がします。ボディコンタクトではとにかく倒れません。小競り合いでちょっと触れただけで倒れることもありません(それどころか、お互い踏ん張って押し合ってる!)。アメフトの国だし、うそをつくのを忌避する習慣だからなのかも知れません。
 全部が全部、というわけではないですが、この辺もMLSが面白いところだと思っています。